『日本の神様』の授業がちょっと難しくて先生を訪ねてみました。
目次
・『日本の神様』の授業がちょっと難しくて先生を訪ねてみました。
・というわけで、本居宣長さんにインタビューすることになりました。
・そうこうしているうちに、「宣長さんの言ってたことはちょっと違うで~」と言う人に出会いました。
・今度は、「平田篤胤さんの言ってることは根拠がないで~」という人に出会いました。
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”好奇心集団sujaku”のリーダーの玉妃(たまき)と申します。
先生~。前回の「政治思想」の授業ありがとうございます!レポートをもう少しわかりやすく書きたいのですが・・・教えて下さい。
玉妃さん、わかりました。
ではさっそく・・・「政治思想」とは何かをイメージできるように説明しますね。
そうだな。今回は江戸時代後期の話なので、家康を例に。徳川家康が戦国時代に江戸幕府を開いてトップになりましたね。戦争に勝ち抜いた者がトップになるという考えーーーこれが当時の「政治思想」というものなんです。
もう少し、私たちの生活レベルで考えると、夫婦のごみ出しは誰がするのか?家事は、女性が担っているのだから女性がごみ出しをするもんだーーーこれも「政治思想」なんです。
へぇ~。夫婦のなかにも政治があるんですか?
政治というと、国会、内閣、選挙など思い浮かべると思いますが、これはあくまで諸制度を指しているのです。
政治家でなくても無人島でひとり生活をしていない限り日常生活のなかで政治的な行動をとっているんです。
日本は西洋や中国・朝鮮とはまたちょっと違った政治思想に支えられてきたんですが、身近な中国・朝鮮はどうなの?って言うと日本と関係があるのでちょっと触れますね。
はい!お願いします。
中国や朝鮮では、古代から近代にかけて、一貫して皇帝や国王を政治的主体とする君主政治がおこなわれてきました。
これを支えてきた「政治思想」は、儒教(道徳的に優れた人間が統治するという考え)なんですね。
さて、日本はと言いますと、江戸時代初期にこの儒教の考えを研究する人がいろいろ出てきたのです。
メジャー級の研究題材でもあったんですね。
しかし、日本は君主制でもない。
日本独自の思想があるんじゃないの?って新たなテーマで研究を始めた人がいるんです。
誰ですか?
本居宣長。
その人はどういう研究をしたのですか?
そうだね。それなら本人に直接聞いてみたらいいですよ。
というわけで、本居宣長さんにインタビューすることになりました。
日本独自の政治思想を研究されたということですが、それを聞かせてもらえますか・・・・
本居宣長です。
よくぞタイムスリップしてこの江戸に来られましたな~。
そうそう、先生からも少し聞いているようだが、私たちの国は君主制でもないし、天皇がいらっしゃるんじゃ。
中国や朝鮮とも歴史的背景が違うんだな。そうなると日本そのものの思想ってあるんじゃないの!?って思ったんじゃ。
そもそもわしは、医者をしながら【古事記】を研究し続けてきたわけなんだが、知ってるか?【古事記】?
はい!歴史の授業で習いました。
正史といえば【日本書紀】。
でもそれよりも【古事記】を重視したのは、【日本書紀】は儒教の考えが染みついとるのじゃ。
【古事記】にはアマテラス(伊勢)が世界を統治してきたと書かれてある。その孫がニニギなんだが、ニニギの子孫は天皇なんじゃ。
そして、その天皇がずっと世の中を治めている、このストーリーはすべて事実なんじゃ。要するに「天皇はアマテラスの子孫」ということ!。
和歌を詠んだら心が動くじゃろ。この心は”やまとごころ”と言って、穏やかに天皇が世の中を治めている”古の道”が、日本にのみ正しく伝わっている。
それは”やまとごころ”が優れているから。だから【古事記】は真実なんじゃ。
中国なんかは、”古の道”が伝わらなくて、人々の卑しさで革命を起こして王朝が交代してるじゃろ。だから、中国の儒学者が持ち上げる聖人なんて虚像というわけ。
なるほど!【古事記】が真実である理由がわかりました。
そうなると、【日本書紀】に書かれてあることは認められないということなんですね。
いや、【日本書紀】を全否定しているわけじゃない。
その書に出てくるオオクニヌシという神がおるんじゃが、この神は【古事記伝】にも出てくる。だから【玉くしげ】でも書いたがオオクニヌシのことは高く評価しておるんじゃ。
まあ結論を言うと、オオクニヌシに関心はあるけれど、わしの考えはアマテラスが神だということじゃ。
そうこうしているうちに、「宣長さんの言ってたことはちょっと違うで~」と言う人に出会いました。
はじめまして。
宣長さんの言ってたことは違うとお聞きしたのですが、どういう点が違うのでしょうか?
平田篤胤(あつたね)です。
宣長さんはおいらの先生だったんでアマテラスのことは知ってるよ。
天皇もいてるから、天皇を仰ぐって気持ちもわかる。血筋はひとつやから凄いよ。
そやけど、天皇も人間やから悪い事したら裁かれるんやで。その裁く神見つけてん。それは・・・オオクニヌシ(出雲)という神や!
・・・・。
宣長さんもオオクニヌシのことは評価されていました。
篤胤(あつたね)さんは、オオクニヌシが日本の神だ!という主張なんでしょうか?
そういうことや。この世には死後の世界があるんやで。
宣長先生は、死後の世界はないって言ってたけど、おいらと決定的にそこが違う。
天皇は「顕明界」を治めている人間。人間が死ねば霊魂が「幽冥界」に行ってオオクニヌシの支配を受けることになるんや。
だから、オオクニヌシの神学が真(まこと)ということやで。
今度は、「平田篤胤さんの言ってることは根拠がないで~」という人に出会いました。
大国隆正です。
篤胤(あつたね)さんの門下生ですが、篤胤先生の言ってることはちょっと根拠がないんです。
と言いますと・・・
やっぱり幽冥界(人が死んだら行く所)を牛耳っているのは、オオクニヌシじゃない。アマテラスです。
そして顕明界(人が生きてる所)は天皇が収めているのは宣長先生も言ってたし、篤胤先生も同じですね。これに関しては私も同感です。
篤胤先生は、【古事記】【日本書記】【風土記】などをつなぎ合わせて【古史成文】を作成されましたが、この古史の選定に客観的な基準がないんです。
このことは徹底的に調べ上げたので、篤胤先生の根拠がないことは揺るがない事実です。
そして、時代は明治維新。
明治政府の皆様こんにちは。
早速質問なのですが・・・
大国隆正さんのお弟子さんから「アマテラスはやっぱり凄いよ!。だから神道を宗教化したらどう?」って投げかけられたんですよね。
そうなんですよ。
あの世もこの世も、結局はアマテラスと天皇が主宰者ということらしい。
でも、宗教化するのは難しいのよね。
じゃあいっそのこと、アマテラスの子孫が天皇なんだから、天皇を神様にするのはどうかしら?と思ってるの。
へぇー!!これまた斬新な考え方ですね。
生きている人間を神様にするという・・・そんな考え方は一度もなかったのでちょっとびっくりなんですが。
そう?
でもいろいろ思案したけれど、アマテラスも国民にはメジャーではないしちょっと無理くり感があるわよね。
だから却下することにしたわ。
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明治政府は、神道を宗教化することや天皇を神様として仰ぐことは排除したのですが、「歴史上アマテラスが凄いという考え方がメジャーなので神社に祀ろう。」となって、現在も伊勢神宮には天照大御人(アマテラスオオミカミ)が祀られているという経過があると思います。
この後の日本は、第二次世界大戦後、民主主義と言われる政治思想へ変わっていきます。
まとめ
玉妃(たまき)の勉強になったこと
・本居宣長は国学を確立させた日本発の人。天皇は「万世一系」というイデオロギーを提唱した人。アマテラスが神と主張。
・平田篤胤は、国学を排除して神道を復古させ宗教化しようときっかけを作った人。オオクニヌシが神と主張。
・大国隆正は、本居宣長の考えを支持。平田篤胤の考えを論破した人。アマテラスが神と主張。
・明治政府は、神道の宗教化を却下。天皇を神様にしようとしたがコレもならず。
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~江戸時代に国学が確立されました。 しかし、神道を復古させて宗教化しよういう思惑がはびこり、もしそれが政治を支えるイデオロギーになっていたら、天皇がアマテラスからずっと血統でつながっているがゆえに尊いという国学の前提が崩れていたかもしれません。 そして、天皇が「万世一系」という考え方は現代になかったかもしれません。 そう思うと思想って重要だと思いましたし、今あるイデオロギーの背景や経緯を学ぶことはとても大切だと思いました。~ |
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